【公開質問回答ー財政編ー仲川げんさん】

仲川げんさん
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1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。

A・過去の奈良市の財政運営は人件費も含めて高コスト体質であったため、行政のムダゼロを目指し、事業仕分けをはじめとした様々な取組を進めてきました。奈良市の財政状況を見ますと、その特徴として、起債残高が大きいことがあげられます。公営企業も含めた奈良市全体の起債残高は、平成23 年度末で約2,787 億円ですが、過去の過大な公共投資に係る市債の発行が大きな要因です。そのため、市長就任以降は大型箱物事業の見直しなど、公共投資に係る市債の発行を抑制した結果、地方交付税の代替財源である臨時財政対策債などの特例債を除いた地方債残高は、平成20 年度末の約2,236 億円から平成23 年度末には約2,132 億円へと、約104 億円の低減を図りました。


また、職員数の多さも特徴のひとつです。平成24年4 月1 日現在の職員数は3,000 人ですが、定員適正化計画に基づく職員削減や、事業の民間委託化を進めた結果、平成21 年4 月と比較して149 人削減しています今後もこれらの取組を継続して進めていく必要があると考えています。

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・財政情報の共有化については、これまでの当初予算案の公表に加えて、平成22 年度予算からは要求・査定状況を、平成25 年度からは市が実施している全ての事業についてその内容を市ホームページに掲載しています。また、平成24 年度からは中学生の皆さんにもわかるように「わかりやすい予算書」を作成しており、今年度は、「わかりやすい決算書」も作成し、財政情報をよりわかりやすくお示ししていきたいと考えており、これらの情報の中で奈良市の厳しい財政状況を市民の皆様にお知らせしてまいります。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・市債の発行にあたっては、その償還が将来世代の担うべき、かつ担い得る範囲を超えないよう、十分配慮する必要があります。現在、毎年の起債償還の中で最も大きな負担となっているのが100 年会館であるように、バブル期の過大な公共投資が現在の奈良市にとって大きな財政負担となっています。公共投資に係る市債の発行については極力抑制すべきであり、また、臨時財政対策債については、その残高が平成23 年度末で約404 億円と増加の一方ですが、これは本来地方交付税で措置されるべきものであり、国において制度の見直しが必要と考えます。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・歳入の確保については、100 億円を超える滞納債権の解消が最重要課題であると認識しています。これはこれまで市税や市営住宅家賃等の滞納について市が厳しい対応をしてこなかったことが要因であることから、差し押さえや裁判所への訴えの提起など、公平性の観点から厳正な対応を行っています。さらに、税外債権について、弁護士等の外部の専門家に回収業務を委託するなど、今後も様々な手法により歳入確保に努めていきます。


経済成長については、定住人口・交流人口の増加が重要であるため、市内の雇用、経済活性化はもちろんのこと、良好な住宅都市としての質を高めるとともに、インバウンドを推進し付加価値の高い観光経済の樹立を目指します。2045 年のリニア中央新幹線開通に向け、30 年後の奈良市の飛躍に向けて取り組んでまいります。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・これまでも徹底した事業の見直しを行ってきましたが、今後は官民役割分担をさらに進める必要があります。また行政が引き続き担う領域においても、民間委託や協働など、多様な実施手法を柔軟に取り入れるべきと考えます。一方、高齢化に伴い増加傾向が著しい介護や医療などの分野においては、長期的な視点に立って予防的観点での取り組みにより将来的な負担を軽減してまいります。


人件費については、計画的な職員削減に加えて、特殊勤務手当の大幅な見直しや超過勤務手当の3 億円削減などに取り組みましたが、今後も業務内容や運営手法を継続的に見直すほか、職務の専門性やレベルに応じ、メリハリのある給与構造を検討していきたいと考えています。


(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・総合計画は市政運営における市の基本的な方向性を示したものですが、社会情勢の変化が激しい今日において、計画行政の意義自体が薄れつつあります。現在の奈良市の総合計画は、基本構想が平成23 年度から平成32 年度までの10 年間、基本計画が5 年間、実施計画が3 年間で毎年度ローリングとなっていますが、近年の社会情勢は10 年間で大きく変化することが見込まれ、それらの変化に対応して柔軟に見直していくことが必要であると考えます。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・現在の中期財政計画については、総合計画実施計画において示していますが、今後計画を策定するにあたっては、中長期的な視点を持って行財政改革を進めながら、まず将来の歳入の見極めをしっかりと行い、それに見合った事業計画を立てていく必要があります。そのことから、収支バランスを考慮した「歳入見込み額」と「歳出見込み額」が重要であると考えます。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・本市では約30 年前から行財政改革に取り組んできましたが、市債残高の増による将来負担の増加や、土地開発公社をはじめとする負の遺産の処理、また、滞納債権の回収など、本来早期に着手すべき課題に対しての対応が不十分であったと認識しています。そのことから、これらの問題に対して市長就任以来積極的に取り組んでまいりましたが、今後も強い意志を持ち、取り組んでまいります。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・市が独自の施策を展開していくためには自由度の高い財源が必要であることから「経常収支比率」、また、長期的な財政運営の視点からは、「将来負担比率」が重要な判断指標になると考えます。これらは市民の皆様にとっても比較的わかりやすい指標であると思います。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・財政健全化には庁内横断的な組織が必要です。現在市では市長を本部長とした「行財政改革推進本部」を設置していますが、作業部会の設置など、より実践的に改革を実行するための体制整備が必要であると考えます。市民や専門家が参加する委員会については、現在、学識経験者などの専門家および公募市民で構成する「行財政改革評価会議」を設置し、行財政改革への取組について様々なご意見をいただいております。


Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・多治見市、富士見市の条例は主に財政運営に際しての基本的な原則を謳ったものであり、財政規律の確立のためにはより実務的な指針が必要です。奈良市においては、行財政改革実施計画において「財政規律の強化」を掲げ、事務事業の見直しや市債残高の削減に取り組んでいますが、これらを着実に実行するとともに、どうすれば実質的に財政健全化を確立できるかを建設的に議論していく必要があると考えます。


※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。



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