12月例会報告「奈良の介護保険あれこれ」

 みなさんは、長生きを望みますか? 
高齢者になった時、どのような生活を望みますか?


 12月20日(金)、政策研究ネットワーク「なら・未来」の例会(第4金曜日)を開催しました。例会は、毎回、発表者とテーマを決めて、参加者とざっくばらんに意見交換をする会です。今回は「奈良の介護保険あれこれ」と題して、奈良介護保険研究会の活動もされている大浦悦子さんにお話いただきました。


  • 高齢者保険福祉政策の流れ

まずは、ざっと介護保険制度の基礎知識について説明いただいた後、保険制度のしくみ、保険料徴収のしくみ、サービス利用の方法をざっと学びました。

1960年代 高齢者福祉政策の始まり 
1970年代 老人医療費の増大
1980年代 社会的入院や寝たきりや社会問題化
1990年代 ゴールドプランの推進
2000年4月 介護保険制度の実施


その後、3年ごとに制度の見直しが行われています。

  • 自分のことを自分で決めるために


従来の福祉制度と介護保険制度の大きな違いのひとつが、必要なサービスを利用者が選択して決めるという点。逆に、従来の制度は行政が一方的に決定する「措置」でした。また事業所も公的機関に限られ、選択肢が無く、競争が働かない点が問題でした。


利用者が自分の望みのサービスを選ぶためには、相談に乗り、事業所と調整を行う「ケアマネージャー」の存在が欠かせません。ケアマネージャーは、複数の事業所のサービス内容を知ることができるという点でも重要で、これがひとつの病院に縛られる医療制度と比べるて、介護の方が情報が得やすいということでした。

  • 日本型福祉(家族介護)は限界に


介護保険制度の導入のひとつの要因が、核家族化、介護者の高齢化です。財政難を理由に、できるだけ家族で担おうとする日本型福祉は立ち行かなくなってきた現実があります。一方で、福祉大国とされるスウェーデンは、高福祉高負担。介護や医療を公共が担い公務員で運営しています。うらやましい部分もある一方で、文化の違いなどから、簡単にはスウェーデンの制度を真似するわけにはいかない、ということでした。日本独自の福祉制度を模索する必要がありそうです。

  • 地域でのケアを考えよう


2006年には、地域で総合的なケアマネジメントを行う「地域包括支援センター」が誕生しました。今後、介護保険の個人負担の増加が予想されますが、市町村によりサービスに差が生じるということ。地域でのケアをどう考えるかが、より良いケア・システムへの鍵になりそうです。

良いケアの事例のひとつとして大浦さんがおっしゃていたのは、利用者のニーズにあった「小規模多機能サービス」を行う事業所が出て来たこと。一定の包括利用料で、訪問、デイサービス、ショートステイなどの複数のサービスを、同一の顔なじみのスタッフが対応するという点が魅力で、とくに認知症の方にとっては望ましいようです。


大浦さんが活動をされている「奈良介護保険研究会」は、2005年に研究をスタート。基本的には専門家の方同志の研究会ですが、一般向けに講演会などをされることもあるようです。

●「奈良介護保険研究会」
http://satobi-gokoro.net/kaigo-labo/kaigoTop.html



誰しもがお世話になる可能性のある介護保険です。最期にどのような人生を送りたいのか。考えるのに早すぎることはありません。主体的に情報を集め、制度に問題があるのであれば政治的な働きかけをすることも必要ではないでしょうか。



★次回の例会は、1月24日(金)午後6時半からです。
会場は、まだ決まっていません。
決まり次第、このブログにて、お知らせいたします。


★★20日の例会の際には、たくさんの方が会場をまちがえて遠回りしてから来られました(;><)
広報が分かりづらく、ご迷惑をおかけしたことをお詫びいたします。




(文責 嶋田)