1月例会報告「奈良市のまちづくり政策」


1月31日(金)の例会は、社団法人奈良まちづくりセンター理事長の室雅博(むろ まさひろ)さんに話題提供をお願いしました。


室さんはまず、「ならまち」の成り立ちについて紹介。710年、遷都に伴って飛鳥の法興寺飛鳥寺)が元興寺として平城京に移され、その旧境内を中心とした地域が「ならまち」です。江戸時代中期以降の町屋が残され、1984年に設立された奈良まちづくりセンターを中心に市民主導の町並み保存運動が展開されました。


1994年には、奈良市都市景観条例に基づく都市景観形成地区に指定されています。奈良まちづくりセンターの初代理事長は木原さん、3代目が室さんです。室さんは「まちづくり活動が成果を上げるためには、最終的には行政の支援が必要。ならまちの保存運動は、市民が主体となって行政を動かした画期的な事例」と話しました。


次に室さんは、自らも委員として関わっている「奈良市市民参画及び協働によるまちづくり審議会」について説明しました。同審議会では現在、2009年7月に施行された「奈良市市民参画及び協働によるまちづくり条例」の見直しに関する検討を行っており、このほど中間報告がまとめられました。条例の特徴は、①前文の最後を「さあ、みんなで一緒にまとづくりを進めましょう!」と呼びかけ調にしていること、②学校の役割を明記していること、③PDCAすべての過程における市民参画をうたっていること、などです。


審議会では、地域コミュニティ政策とNPO政策の2点を中心に議論が進められましたが、前者については奈良市自治連合会の中に設けられた地域自治協議会検討委員会での検討が行われており、この2月に中間報告が出される見通しであるため、審議会としては当面その議論の経過を見守ることにしたといいます。「地域自治協議会検討委員会に丸投げするのでなく、審議会としても主体的に検討すべきではないかと発言したが、賛同を得られなかった」と室さん。また、ほとんど発言しない委員がいることなど、審議会運営のあり方についての問題点も指摘しました。



 質疑応答では、参加者から次のような意見が出されました。


1.ならまちのまちづくりについて

【意見】

  • 「きたまち」も含めた「奈良町」全体の振興を図る視点が必要。
  • 伝統的な町屋を現代建築に建て替える事例も少なくない。フランスなどに倣って、より厳しい規制をかけるべきではないか。
  • 電線の地中化が、「地元の反対」のためなかなか進んでいない。


【室さんの補足意見】

  • まちづくりセンターは人的にも財政的にも体力が弱っている。
  • 都市景観形成地区に指定されて20年。その総括を行う場を設けたい。

2.市民協働・参画について
 

  • ワークショップを開いて市民の意見を集約するなど、政策形成に市民が参画できる仕組みを制度化すべき。
  • 市の職員に、「市民参画・協働を進めると自分の仕事が増えるだけ」という意識があるのではないか。
  • なぜ市民参画や協働が必要なのかという「そもそも論」が必要なのではないか。
  • 審議会の議論は他の審議会も含めて形骸化している。
  • パブリックコメントは市民の意見も取り入れたというアリバイづくりのようなもの。意思決定の前の段階でいかに多様な市民の意見を聴くかが重要。松阪市では意思決定の前に必ず市民参加によるフォーラムを開催している。
  • 市民参画・協働を進めるには、たとえば地域課題について車座で議論して課題解決方法をまとめていくなど、具体的な取り組みを積み上げていくことが大切。
  • 塩漬け土地の問題にしても、市民の声が行政に届いておらず責任追及が曖昧になっている。

 特に市民参画・協働については、さまざまな視点から条例の運用実態をめぐる問題点が指摘され、20時30分過ぎまで白熱した議論が行われました。



 次回2月の例会は次のとおりです。会員以外の方も参加自由(参加無料)ですので、ぜひお知り合いの方もお誘いいただき、ご参加ください。

 ・日時 2月28日(金)午後6時30分〜8時30分
 ・会場 奈良市ボランティアインフォメーションセンター1−1
 ・発表者 梅屋則夫さん(奈良NPOセンターシニアフェロー、中小企業診断士
 ・演題 データに基づく奈良の発展戦略