4月例会報告 共産党奈良市議団による「奈良市の財政分析」

  • と き:2014年4月18日 18:30〜20:40
  • ところ:奈良市はぐくみセンター会議室
  • 出席者 共産党奈良市議団 北村幹事長以下7名 「なら・未来」 北井代表以下14名

1 「〜奈良市財政〜改革のための財政分析」*1報告(井上議員)


2013年6月にとりまとめた上記報告書を中心に、奈良市財政の分析結果を報告





1) 本報告書の目的とスタンス

  • 住民福祉の向上を実現するための経済的手段であり、黒字は目標とはならない
  • 所得再分配機能を発揮して、住民間の所得格差解消に機能しているかなど「名誉な赤字」、「不名誉な黒字」もあり得ることを前提に分析
  • 分析手法では、類似都市比較よりも「経年変化分析」を重視 →債務の飛び抜けた多さに問題があり、その要因や背景を探る



2)「奈良市の財政指標」の特徴をどう評価するか


①民生費、扶助費等の義務的経費が経常収支比率を押し上げ、財政硬直化の特質あるも「都市成熟化」の一面でもある。
②市債(借金)が多く、その返済が膨らみ財政を圧迫している →実質公債費比率、将来負担比率など中核都市(40市)の中でも最悪水準。
③資産・負債などを明らかにするためのBS、行政コスト計算書などの財務書類の整備が進み、中核都市で比較検討すると次のような課題が明らかとなる。
   住民1人あたり資産が低く、負債が多い →中核市平均より△30万円低い
   公共資産の投資は過去及び現役世代負担が低く(中核市平均より△28%)、将来世代につけ回ししている(中核市平均より20%将来世代の負担率が高い)
   地方債召還可能年数が中核市平均=11年、奈良市=26年 →将来負担が高額
                  ↓ 
  税収の落ち込みが続く中で、景気対策や都市間競争の名目のもと公共土木事業が進められため ➜身の丈を考えた支出が行われなかったと総括
④問題先送り体質があった。
   「住宅新築資金貸付会計」の異常運用
   「土地開発公社の解散」〜160億円もの債権放棄などあった
⑤結論として市財政全体をどう見るか。
   深刻な財政難にあるとの認識
   しかし、「財政危機」を過度に強調すれば市政への市民のアプローチを鈍らせることが問題と指摘したうえで、財政悪化の要因を「長期に続いた同和行政」、「起債依存の公共事業のツケ」と「地域産業政策が効果的でなかった」と結論。



2 質疑応答


Q 市財政が所得再分配機能を果たすことが大切と報告され、住民間の所得格差を少なくする方向で機能しているかの視点とはどのようなものか?
A 老人医療の助成、障害者医療の助成制度などによって格差是正を図る。しかし近年は、老人助成を減額して子ども対策に回した。これは施策の横の移動であって縦(格差是正)移動ではないと認識している。➜高額所得者の負荷を強め低所得者に還元。
 

Q 財政に余裕がない。財政悪化は何が原因かを究明しないとダメ。市民1人あたりの資産額 →中核市に比較して30万円少なく、負債は23万円多い。 →純資産が少ないことが問題と捉えるがどうか。
A 市議も市民も同じベースで解決策を見いださなければならない。とくに市の財政を赤字決算にしないためのやりくりが多すぎる。本質から目をそらしていると思う。


Q もっとショック療法が必要でないか。財政の危機について市民との認識がもっと必要と思われるが。
A 民主主義の世の中だから、自分たちが掲げる方針を実行すれば良くなるとの道筋を考えてやっているので、ショック療法は少し乱暴でないか。


Q ”名誉な赤字”、”不名誉な黒字”の意味は?
A 財政とは市民のために存在しており、施策はすべてが福祉となる。よって黒字を出すことが目的ではない。赤字になっても必要な政策は実行しなければならないという考え。


Q 市長と議会の関係は二元代表制。国と同じではなく議員間で討論をして、議会としての結論を出した上で、市長とあり方など協議すべきでないか。
A 基本的な自治体の役割は何か、それを元に財政や議案の判断をしている。基本的に市行政は利潤を上げる処ではなく、採算を上げることも目的ではない。地方自自体としてのやるべきことをしっかりやるというスタンスで臨むべきである。


Q この分析で公債費が多く将来に負担を先送りするなど財政上の課題が大きいことは理解できた。では、それを受けてどのように改善するかの処方箋が書かれていないが、どのように考えているか。また、今後の課題として5年先に財政はどうなるかの事業見通しなどを策定しないと方向性も出てこないがどのようにお考えか。
A 現状は分析にとどまっている、処方箋は今後の課題。5年後にどのような状況になるかの視点は大切と思われるが現実には難しい状況。


Q ファシリティマネジメントの考え方は、また奈良市職員の地域手当は10%、生駒市は6%、大和郡山市は10%など有るが奈良市はこれで良いのか。
A ファシリティマネジメントの推進は反対でないので今後に取り組みをしていきたい。地域手当はこれまで議論したことがない。組合との関係もあるが検討してみたい。


Q 強固な税源基盤が必要とあるが、これはどのようなことを云っているか。
A 税源確保の問題は充実しなければならない課題と受け止めている。先々の奈良市経済的発展をどう考えるか、奈良市にしかない資源を生かし、磨いていくと云うこと。


Q 支出面の選択と集中は是か非か。今日のような低成長時代では、すべてを実行することは問題であり、選択と集中が必要。方向性などどのように考えるか。
A 評価尺度は市民にとってどうかということ。共産党として社会的弱者にフォーカスして予算がつけられているかで判断。市民の理解がなければいけない。合意形成の仕方も問題と捉えている。


(文責 梅屋則夫)

*1:「〜奈良市財政〜改革のための財政分析」は、共産党奈良市議団HPよりダウンロードできます。 http://www.jcp-naracity.com/seisaku/narazaisei.pdf