2017年4月例会報告

政策研究ネットワーク「なら・未来」 2017年4月例会

日時 2017年4月27日
会場 奈良市ボランティアインフォメーションセンター
講師 塩見牧子さん(生駒市議会議員)http://shiomimakiko.com


講演内容


1.自己紹介
 ・2001年に市立保育園で起こったO157集団感染事件を機に、保育環境の改善を求める運動や裁判支援、関西文化学術研究都市高山地区第二工区ニュータウン開発の是非を問う住民投票条例の制定を求める直接請求運動に携わる。
 ・2007年、前年に就任した山下真市長の支持母体「さわやか生駒」の要請を受けて市議会議員選挙に出馬し、当選。
 ・1期目の終わりに市長会派を離脱し、無会派に。
 ・現在3期目。


2.東京都における小池旋風と生駒市における「さわやか旋風」

 ・7月の都議選に向けて、自民から11人、民進から6人が都民ファーストの会に鞍替え。
 ・猪瀬都知事、舛添都知事が相次いで不祥事により途中辞任した後、小池氏が豊洲市場問題、東京オリンピックの財政負担問題などを争点として当選。
 ・これと同様の事態が10年前に生駒市で起こっていた。学研高山第二工区などを争点として若い山下市長が誕生し、市長と対立していた酒井元議長と中本前市長が2007年に逮捕。


3.山下市政の軌跡

 ・1期目…生駒市立病院指定管理者公募、高山見直し検討PT発足
 ・2期目…第5次総合計画策定、高山見直し検討中止、リニア中間駅誘致表明、高山スーパースクールゾーン構想、スマートコミュニティ推進奨励金要綱策定、生駒駅賑わい創出拠点購入費用・スマコミ推進奨励金を含む補正予算の再議
 ・3期目…ごみ有料化、サンヨースポーツセンター取得、生駒山麓公園指定管理者議案可決、生駒北スポーツセンター整備工事契約議案可決


4.「立つ鳥後を濁す」その1 小中一貫校

 ・2012年10月、高山スーパースクールゾーン構想の発表
 <問題点>
・小中一貫校は総合計画にもなく、2008年の市議会では否定していた。教育委員会での議論もなかった。
  ・生駒北小・北中はいずれも2008年に耐震工事を完了
  ・高山幼稚園は最も悪い耐震数値
 ・1年間かけて小中一貫教育に関する懇話会を設置して検討し直すことに。
 ・2017年4月に新校舎が完成したが、2015年度決算で耐震工事の起債の繰り上げ償還2200万円


5.「立つ鳥後を濁す」その2 スマートコミュニティ推進奨励金

 ・2012年11月12日、スマートコミュニティ推進奨励金設置要綱制定。19日、全員協議会で要綱と認定開発地・事業者の報告。20日午前、開発事業地と事業者の第1号認定(予算措置なし)、午後環境首都創造自治体フォーラムで発表。
 <問題点>
  ・総合計画になし
  ・地方自治法第222条(予算を伴う条例・規則等についての制限)に違反
  ・すでに第1期分譲として例外住宅が生じているが、要綱の例外規定における市長の裁量が大きい。
  ・個人でエコ住宅を建設・改修した者との不公平
 ・2013年3月、事業費5000万円を削除する予算修正案を議会が可決
 ・2013年9月定例会で、要綱を事業者への交付金から世帯主への交付に改正し、金額を5000万円から2350万円に減額して補正予算案を提案。しかし、建売住宅にしか適用できないという不備。再度、事業費を削除する修正案を可決したが、再議に付され原案可決。
 ・その後、第2号認定地はなし


6.「立つ鳥後を濁す」その3 生駒駅前賑わい創出事業

 ・2013年9月定例会で、生駒駅前再開発ビルの権利床を取得し、環境基本計画推進のため市と事業者と市民でつくるエコネットいこまの活動拠点にするとともに、エコネットいこま・商工会議所・観光協会で社団法人をつくってエコグッズの販売を行うとして、5500万円の補正予算案を提案
 <問題点>
  ・総合計画になし
  ・観光協会は理事会で否決したので、社団法人結成の見込みなし
 ・議会は事業実現性が低いとして事業費を減額修正したが、再議の結果原案可決。
 ・社団法人は結成されず、現在は商工会議所が無償で使用し、生駒の土産物販売をするアンテナショップに。


7.「立つ鳥後を濁す」その4 北部スポーツタウン構想と北大和グラウンド低炭素まちづくり

 ・2013年5月の全員協議会で、サンヨースポーツセンターの取得検討が報告され、同年7〜8月に民間スポーツ施設取得検討懇話会を開催し、購入すべきと答申。取得の財源として、北大和グラウンドの売却と北部スポーツタウン構想が示される。
 ・2013年8月、地元自治会に説明。反対意見に対し、市長は「地元反対ならこの事業は進めない」。 
 ・2014年3月、2013年度補正予算案でセンター取得費計上、2014年度当初予算案でセンター施設整備費計上
 <問題点>
  ・既存の施設を活用し身近なところでスポーツを楽しむというスポーツ振興計画と逆行。市の中心部から車で30分を要し、低炭素まちづくりに逆行
  ・サンヨースポーツセンターも北大和グラウンドも不動産鑑定を随意契約で実施。サンヨーと価格交渉が終わってから不動産鑑定を行っている。
  ・毎年5000万円の運営赤字
  ・北大和グラウンドの都市計画上の問題
  ・プロポーザルの問題…近鉄側の主張「自社保有地の東側隣接地と一体で大規模なスマートコミュニティの形成が可能」「東側から進入路を確保できる」
  ・購入価格の問題…サンヨー購入方針の決定時、プロポーザル公募時、近鉄提案買い受け価格はいずれも13億円程度(積算方式の如何にかかわらずはじめに13億ありき)
 ・生駒北スポーツセンターは開設したものの、現在住民数名が奈良地裁に照明使用停止の仮処分請求。
 ・北大和グラウンドは、2015年12月に市街化区域編入不採択となり、スマートコミュニティ計画は頓挫。現在ふたたび運動施設として使用中。
 ・2015年度予算は売却収入を見込んで組んでいたため、決算で10億円の単年度収支赤字。


8.「立つ鳥後を濁す」その5 家庭ごみ有料化

 ・山下市長2期目のマニフェストでごみ有料化を掲げる
  ➡有料化しないと減量できないのかとの意見を踏まえ、「ごみ半減会議」を設置し、モデル地区を定めて減量の取組みを実施した。しかし市内全体で11.8%の減量にとどまるとの結果➡有料化に向けて検討せよとの意見
 ・2014年1月、山下氏が再びごみ有料化を掲げて当選。同年2月、広報にごみ半減会議の意見を掲載。同年3月、議案として提出、可決(市民への説明は議案が通った後)
 ・実施後半年で紙おむつごみの無料化。削減率は2013年度比で11.5%(トライアルとほぼ同じ効果しか上がらず)


9.「立つ鳥後を濁す」その6 生駒山麓公園指定管理業務

 ・2013年12月の全員協議会で、新たな指定管理者について、障害者就労支援の場にすべく一者指定で選考を行うとの報告
 ・2014年3月定例会で、モンベル・あおはに共同体を指定管理者とする議案を提案、可決。指定管理期間10年
 ・2013年1月、重度心身障害者等福祉年金を廃止して就労支援を拡充するということだったが、2016年6月、指定管理者の都市公園法違反行為が発覚。


10.生駒市議会の現状

 ・行政の無謬性を妄信(たとえ誤っても善意で行ったことであれば許される)
 ・「見ざる(議員独自で調査しない)聞かざる(市民の声を聴かない)言わざる(発言しない)」


11.ヒーロー頼みの政治に潜む罠

 ・一度植え付けられたイメージは簡単には払しょくできない。ヒーローはどこまでもヒーロー。ヒーロー批判は世間を敵に回す。
 ・虚像を暴くには事実で対抗するしかない。徹底した情報公開とメディアリテラシーの涵養が必要。
 ・ヒーローが間違った道を歩み出したとき是正できるのは議会と市民。ヒーローを選ぶより、自ら調査し、正しい判断ができる議員を選ぶことに注力したほうがいい。


12.政治塾

 ・政治塾は品質保証はしないし、現実問題として品質に疑問の残る政治塾出身議員も少なくない。
 ・他人の品質保証に頼るのでなく、自分の目と耳を頼りにして選ぶ姿勢が大事



意見・質疑応答

 ・(橿原市・奥田議員)自分はあくまでも政策本位でありたい。そのため、1人会派でも大会派と同じようになんでもてきるよう制度を変えてきた。議員としての権利が数によって制限されるのはおかしい。
 ・地方自治体においては二元代表制なので、本来与党会派と野党会派が存在することがおかしい。
 ・普通の市民は、どのような基準で議員を選べばいいのかわからない。
 ・投票率を上げることが大事。選挙後であっても、「今回当選した人はこんな人ですよ」という情報を発信し続けることで、次回の選挙につながる。
 ・山下市長は2期目、3期目と当選を重ねるごとに変節していったことはたしかだが、1期目から市立病院指定管理者の選考経過など不透明な部分もあった。
 ・(塩見氏)新人候補について議員としての能力を判断することは難しいが、現職については会議録を見れば、どのような発言をしたのかチェックできる。詳しい内容まで読まなくても、この人はほとんど発言していない(=議員としての務めを果たしていない)といったことはわかる。