【公開質問回答ー財政編ー天野 秀治さん】


天野 秀治さん
※ 天野秀治 政策ページ  http://www.s-amano.jp


1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。


A・奈良市の財政状況は、その指標が示す通り極めて厳しい状況にあります。平成25 年度予算においては、土地売却や、これまでに経験したことの無い滞納債権の徴収率を掲げることにより、極めて見込みの薄いものまで歳入としている状況です。このような財政状況に陥った原因は政策立案の過程がうまく機能せず、役所内のチェック機能や政策立案能力の不足などにあると分析しています。よって、「考える組織改革」となるよう、組織として考えて意思決定する体制に変更する必要があると考えていす。

これまでのような、あたかも素人の思いつきがそのまま通ってしまって市政に負荷を与えるのではなく、市役所組織として意思決定するようにすれば、行政経営上のムダは大幅に削減できるのではないかと考えます。財政健全化のためには、まず合理的な政策検討ができ、合理的な意思決定を行える体制へと改革することが最も重要であると考えます。

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・徹底した情報公開が必要であると考えます。従前のように開示請求をもって初めて情報公開するのではなく、制度として積極的に公開する姿勢が必要であり、市民参画のためにはこれが条件となります。市民と共に考える機会を意思決定の前に必ず行うことや、常設の市民会議等によって財政情報の共有化を図ります。なお、観光都市はイメージが大切です。財政非常事態宣言については現時点では行うべきではないと考えています。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・市債発行は極力抑制するべきであり、将来世代への負担軽減の観点からも積極的に削減に努めるべきと考えます。(1)でも述べましたが、このような財政状況に陥った原因は政策立案の過程がうまく機能せず、役所内のチェック機能や政策立案能力の不足などにあると分析しています。ホッケー場用地として進入路さえ無い切り立った山林を宅地価格で購入するような、通常であれば少し考えれば止められた巨額のムダ遣いはこうした組織体制から生じたものと分析しています。


現在でも額の大小はありますが体質は同じであり、起案書には数多くの印鑑が照査されているものの、トップダウンの案件は事実上照査されていないに等しい状況です。なお、市債残高削減の鍵は計画行政、行政改革、市民参加であると考えています。特に現在は計画行政という意識が薄れているように感じています。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・地域循環型経済の構築を提唱します。内容は大きく分けて2つとなります。
①市のお金の使い方をどうするか?入札改革で社会的入札の導入を行うことにより、地域経済にどれくらい循環させることができるのかの指標を設けます。


②民間企業における再投資地域に投資する企業に対し、条例や制度によって再投資を促すことにより、地域共生型企業を育成します。地域へ投資する企業が、その投資によって得られた利益を再び地域に投資することにメリットがある制度を構築することにより、地域経済を持続的に発展させるのが地域循環型経済です。


さらに、トップセールスにより民間・公を問わず遊休土地に商業施設等を誘致し、商業地としての固定資産税、雇用、ひいては市民税の増大を図ります。観光事業としては地域固有資源の再発見と利活用、及びリピーターにメリットを与える戦略を考えています。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・歳出の見直しについては、市民に情報公開を徹底した上での市民参画のもと、現在行われている事業の選択と集中を行うと同時に、新規事業における計画行政の徹底や国及び県の補助金を職員一丸となって探す努力をします。(1)で述べたように、政策形成過程が熟成することによって、確実に無駄な投資は削減できます。また、事業化する前の市民審査などによって、これまでのような理由にならないような理由で1社随意契約などを防止することが可能です。


業者のいいなりになっている場面は現在でも多くみられ、これを是正するだけでも歳出を大幅に削減することが可能と考えます。なお、人件費削減については必ず期限を定め、それまでに職員が危機感をもって一定の水準を達成できない場合にはさらに削減を継続するといったシステムを考えています。

(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・私は総合計画検討特別委員長を務めましたが、その当時からコンサル主導の計画には非常に不満をもっています。総合計画は簡素な文書にて職員自らの力で作成すべきであり、それが公務員の醍醐味でもあります。財政運営との関係については、計画行政通り予算編成をすれば自動的に次年度予算が作成できる環境を構築したいと考えています。毎年なんとか予算が組めたというような計画に乗っ取らない財政運営手法に否定的な考えです。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・歳入歳出の過不足見込額、基金残高見込額、地方債の返済予定額一覧が必要です。持続可能な行政運営のためには、過不足額が基金残高や公債費に影響を与えるので、この数値を把握することにより長期の財政計画を予測できると考えます。現在の奈良市はシミュレーションを行える環境に無いため、情報系のデータを得られるシステムへと改変し、あらゆる要素からシミュレーションにて得られたデータを加味して計画立案すべきと考えます。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・政治は結果です。行財政改革が十分な成果を上げていたら現在のような財政状況には陥っていないと考えます。もちろん、経済状況の低迷など外的要因もあるものの、計画通りの人件費削減が職員の疲弊に繋がり効率が悪化するなど、派生した問題もあります。行財政改革はもっと簡易な表現で全職員が理解し共有する必要があります。また、市民にも理解を求めるものでなければならないと考えています。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・「財政力指数」「経常収支比率」、「将来負担比率」など各種指標はいずれも必要です。中でも持続的な財政運営のためには「将来負担比率」が重要であると考えています。地方自治体として、将来支払わねばならない負債が小さくなれば、必要な資金を必要な場面にまわすことができるようになります。これを意識した行政運営が重要だと考えます。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・基本的に市民参画および有識者が参加する財政危機突破委員会の設立には賛成です。市民と現下の財政状況に関する情報を共有するだけでなく、有識者により改善策に関するノウハウを得て、さらに総合計画との対比、他市事例、事業の見直しなどを行うことにより財政再建を目指すべきであると考えています。この中には若手職員も参画してもらい、20 年後を見据えた委員会とすべきです。

Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・財政再建を条例に則って行うという考えにはやや否定的です。条例や規則に縛られず、自由な考えから新しい発想を行うべきであると考えます。そもそも時代の流れは早く、即応した体制を取る方が有意性は高いのではないでしょうか?それよりも計画行政の徹底の方が効果的であると考えています。


※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。