【公開質問回答ー市民参画編ー天野 秀治さん】


天野 秀治さんの回答




2.市民参画(参加)と協働による市政運営について


(1)奈良市の市民参画と協働による市政運営の現
状について



Q・奈良市の市民参画と協働による市政運営の現状をどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。

A・奈良市まちづくり三条例と呼ばれる条例があります。「奈良市市民参画及び協働によるまちづくり条例」はその一つでありますが、庁内でその意識が徹底できているとは思えません。市民参画とは名ばかりで同じ人ばかりがあらゆる場面で登場しており、団体の代表による充て職も少なくありません。それよりも、本気でそれぞれ所管する案件を検討するメンバーを招集する姿勢が必要であると考えています。


私はこれら三条例(残り2つは「奈良市安全安心まちづくり条例」「奈良市もてなしのまちづくり条例」をまとめ、「自治基本条例」として整理することによって、市民と職員が方向性を共有することが必要であると考えています。また、市民参画の前提となるのは徹底した情報公開です。これに関しても制度的な思考によってあらゆる情報を市民に公開することを先に行うべきです。


(2)市民参画の充実・強化について


Q・これからの市政運営には市民のニーズや意見、提言・提案等を積極的に取り入れる必要があります。「奈良市市民参画及び協働によるまちづくり条例」には、市民参画とは「市の施策の企画立案の過程から実施及び評価に至る各段階において、市民が主体的に参加し、意思形成にかかわることをいう」と規定しています。「奈良市はいま以上に市政への市民参画を進めるべき」との意見に賛成ですか?併せて、市民参画を充実・強化する方策や制度提案についてお書き下さい。

A・もちろん「奈良市はいま以上に市政への市民参画を進めるべき」との意見に賛成です。現在のような情報公開レベルでは十分な市民参画が行われるはずもありません。欲しい情報が情報公開請求によってやっと出てくるような状況では現状を改善することはできません。現在の市政運営が、主権者である市民が主体的に参加している状態だと感じる市民は皆無ではないでしょうか。よって条例にて定められたものを形式的に整えているに過ぎない状況が現実であり、これでは行政のムダが無くならないのも無理はありません。私は常設型市民会議の設置や市民監査制度、さらに迅速なパブリックコメントを行うためのWeb アンケートなどの新しい制度を提唱しています。市民とともに歩む市政は現在の市政運営では決定的に欠けていると感じています。

(3)協働(制度)の充実・強化について


Q・これからの市政運営には市民、自治会などの地域自治組織、NPO、事業者等と行政との協働(パートナーシップ)による公共サービスの供給が求められます。「奈良市はいま以上に市と民間団体との協働を進めるべき」との意見に賛成ですか?併せて、協働を充実・強化する方策や制度提案についてお書き下さい。

A・「奈良市はいま以上に市と民間団体との協働を進めるべき」との意見に賛成です。特にNPO に関しては単なる格安下請けといった位置づけに陥っているように感じます。そのため彼らは受託事業で手一杯になり、受託が継続されないリスクに恐怖感を感じています。このような受託事業への依存性が増大している状況では彼らのミッションに手が回りません。本来の協働とは格安委託事業を行うことではなく、ともに考えまちづくりをしていくことではないでしょうか。
奈良市では人権文化センターの閉鎖を数多く行いました。京都市のように、こうした施設を活用した活躍の場の提供を行い、彼らの目指すミッションを実現しつつ、運営資金捻出ができるだけの委託事業を安定して継続する必要があります。単なる合理化のため、現在は十分な市民団体との協働が図れているとは言い難い状況にあります。

(4)地域自治の仕組み(システム)づくりについて



Q・「例えば、小学校区単位で『まちづくり協議会』などの地域自治組織をつくっていくべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?小学校区単位における地域自治の仕組みづくりの必要性について、また地域自治の仕組みづくりに求められる行政の支援体制などについてお書き下さい。

A・地域自治システムに関しては全面的に見直す必要があると考えています。ただし、新たに『まちづくり協議会』といった組織を作るのではありません。自治会加入率や連合会加入率、さらに万青加入率などが大幅に低下している現状、さらに地域には数多くの自治組織があるものの、同じ人が多くの団体にて活動している状況では本来の住民自治に支障を来たしているのではないでしょうか。例えば福祉関係では同じような活動を複数の団体が行っているケースもあります。


私は各小学校をコミュニティスクール化し、ここを拠点として各地域の住民自治を行うべきと考えています。特に自主防災予算が連合会単位に支給される現状においては、自治会によって市の支援に偏向が生じてしまいます。よって、数多くある住民自治組織を改編し、地域自治力が高まるような組織を再構築すべきと考えています。


(5)自治基本条例の制定について。



Q・「奈良市でも、自治体の憲法といえる自治基本条例を制定し、市民自治型の市政運営を図るべき」との意見に賛成ですか?自治基本条例制定についてお書き下さい。併せて、自治基本条例に市民投票(住民投票)制度を設けることについての意見もお書き下さい。

A・(1)でも述べたように、奈良市には自治基本条例に代わるものとして「まちづくり三条例」が既に存在しています。そしてこれらを統合して自治基本条例とすることにより、わかりやすいまちづくり条例になると考えています。よって設問にあるように新たに自治基本条例を定めるのではなく、整理統合・発展するものとして制定すべきと考えています。


住民投票制度については議会の理解を得なければなりません。二元代表性にあって、市民の直接請求権というのは大幅に制限されています。しかし現実に直接請求できるものもあるわけですから半間接民主制でもあると言えます。よって、重要な案件については住民投票制度によって住民の意思を確認する必要があると考えています。議員は市民の代表ではありますが、地域、支援団体など、かなりバイアスのかかった代表であることも事実です。よってこの制度は必要であると考えています。

※政策研究ネットワーク「なら・未来」では、市長立候補予定者には市政の重要課題である「1・財政の健全化について」と「2・市民参画(参加)と協働による市政運営について」の2問について質問を行っていました。「1・財政の健全化について」についても、ぜひご参照ください。


.