10月度例会報告

10月25日、政策研究ネットワーク「なら・未来」の例会(第4金曜日)を開催しました。例会では毎回、会員による話題提供を持ち回りで行ない、意見交換、情報共有を図って、今後の活動のきっかけにしてゆこうとしております。






今回の話題提供者は三重県名張市市議会議員の幸松孝太郎(ゆきまつ こうろう)さん。名張市で現在展開中の地域自治施策について、経過・成果・課題などについてお話しいただきました。





名張市の「地域自治」は平成の大合併の際、伊賀市との合併ではなく、単独市としてゆくことを住民投票により選択されたことからスタートしています。当時(平成14年)市は財政非常事態宣言を出したほどの状況でしたが、市民は合併による効率化を望まなかったわけです。ここに市民による自発的な「自治」の意識を基とする、「新しい公」によるまちづくりが展開されています。


・第1ステージ(平成15年〜)


 従来の補助金制度を「ゆめづくり地域交付金」に改め、地域が自由に予算を編成し執行するシステムを構築。「地域」とは小学校区を単位とする14(現在は15)の「地域づくり委員会」が運営するまちづくり域。



・第2ステージ(平成21年〜)


 従来の区長制度を廃止して地域組織の一元化。地域づくりに関る市民の「体制の整備」(自治基本条例に基づく地域づくり組織条例を制定)による都市内分権の推進。



・第3ステージ(平成24年〜)


 市内15の地域づくり組織において、「地域ビジョン」を策定。地域資源を活用し、地域の課題を解決するための基本方針、将来像を取りまとめた計画で、平成24年度名張市総合計画の地域別計画に位置付け。平成25年度から「ゆめづくり協働事業」として実施予定。




このように着実に「地域自治」が展開されていますが、重要なポイントは、「地域づくり組織の体制」と「財政の仕組み」であろうかと感じました。


・「地域づくり組織の体制」は、法人化を図ることを基本として、役員会、部会、監事を体系化し、年1回の総会をもって運営を図っています(現在、地域づくり組織(15)の法人化としては、地縁法人2つと一般社団法人1つの計3つ。基礎的コミュニティを含めると34が法人化)。また、地域相互の連携を目的に、概ね2か月に1回の代表者会議がもたれ、さらには1年に3〜4回、市議会との懇談会、市長、議長、警察署長との懇談会を行なわれるなど、常に互いを意識し合い、意見の交流を図って、「市のまちづくり」の大きな流れの方向を定めようとしていると感じました。加えて、平成21年度から市職員による地域担当職員制度(各地域2名)がスタートし、平成24年度から担当監(3名)が配置され、市の支援として行政との効率的な協働体制がかたちづくられています。


・「財政の仕組み」は、各地域の人口やコミュニティ(自治会)数を根拠に積算される交付金と、公民館の指定管理者委託契約により構成されており、特筆すべきは交付金は年度の繰り越しが認められているという事です。それ程に自由度が高く同時に責任の重い財政を地域が担っています。



各地域の活動はフェイスブックで発信されています。
http://www.city.nabari.lg.jp/hp/menu000018200/hpg000018154.htm 
楽しく、誇らしく、まちづくりを実践されている姿を注目してゆきたいと思います。


(文責 室賀)