市長立候補予定者・公開質問回答 -財政編-

政策研究ネットワーク「なら・未来」では、7 月21 日の奈良市長・市議会議員選挙に向けて立候補予定者に公開質問をおこないました。


すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しておりますが、ここでは、市長候補者の回答結果を、回答者ごとにまとめたものをご紹介します。市長立候補予定者には市政の重要課題である「1・財政の健全化について」と「2・市民参画(参加)と協働による市政運営について」の2問に絞り込んで質問を行っています。


回答者は、市長立候補予定者(5月27日時点)の7名のうち、仲川げん氏池田のり久氏大野ゆうじ氏中村あつ子氏天野秀治氏にご回答をいただきました。(立候補表明順)。


浅川清仁氏と森岡正宏氏は、回答を辞退されました。


お忙しい中、回答にご協力をいただきました立候補予定者の皆様に御礼を申し上げますとともに、市民・有権者の候補者選択に本回答が有効に生かされますことを祈念しております。

【公開質問回答ー財政編ー天野 秀治さん】


天野 秀治さん
※ 天野秀治 政策ページ  http://www.s-amano.jp


1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。


A・奈良市の財政状況は、その指標が示す通り極めて厳しい状況にあります。平成25 年度予算においては、土地売却や、これまでに経験したことの無い滞納債権の徴収率を掲げることにより、極めて見込みの薄いものまで歳入としている状況です。このような財政状況に陥った原因は政策立案の過程がうまく機能せず、役所内のチェック機能や政策立案能力の不足などにあると分析しています。よって、「考える組織改革」となるよう、組織として考えて意思決定する体制に変更する必要があると考えていす。

これまでのような、あたかも素人の思いつきがそのまま通ってしまって市政に負荷を与えるのではなく、市役所組織として意思決定するようにすれば、行政経営上のムダは大幅に削減できるのではないかと考えます。財政健全化のためには、まず合理的な政策検討ができ、合理的な意思決定を行える体制へと改革することが最も重要であると考えます。

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・徹底した情報公開が必要であると考えます。従前のように開示請求をもって初めて情報公開するのではなく、制度として積極的に公開する姿勢が必要であり、市民参画のためにはこれが条件となります。市民と共に考える機会を意思決定の前に必ず行うことや、常設の市民会議等によって財政情報の共有化を図ります。なお、観光都市はイメージが大切です。財政非常事態宣言については現時点では行うべきではないと考えています。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・市債発行は極力抑制するべきであり、将来世代への負担軽減の観点からも積極的に削減に努めるべきと考えます。(1)でも述べましたが、このような財政状況に陥った原因は政策立案の過程がうまく機能せず、役所内のチェック機能や政策立案能力の不足などにあると分析しています。ホッケー場用地として進入路さえ無い切り立った山林を宅地価格で購入するような、通常であれば少し考えれば止められた巨額のムダ遣いはこうした組織体制から生じたものと分析しています。


現在でも額の大小はありますが体質は同じであり、起案書には数多くの印鑑が照査されているものの、トップダウンの案件は事実上照査されていないに等しい状況です。なお、市債残高削減の鍵は計画行政、行政改革、市民参加であると考えています。特に現在は計画行政という意識が薄れているように感じています。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・地域循環型経済の構築を提唱します。内容は大きく分けて2つとなります。
①市のお金の使い方をどうするか?入札改革で社会的入札の導入を行うことにより、地域経済にどれくらい循環させることができるのかの指標を設けます。


②民間企業における再投資地域に投資する企業に対し、条例や制度によって再投資を促すことにより、地域共生型企業を育成します。地域へ投資する企業が、その投資によって得られた利益を再び地域に投資することにメリットがある制度を構築することにより、地域経済を持続的に発展させるのが地域循環型経済です。


さらに、トップセールスにより民間・公を問わず遊休土地に商業施設等を誘致し、商業地としての固定資産税、雇用、ひいては市民税の増大を図ります。観光事業としては地域固有資源の再発見と利活用、及びリピーターにメリットを与える戦略を考えています。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・歳出の見直しについては、市民に情報公開を徹底した上での市民参画のもと、現在行われている事業の選択と集中を行うと同時に、新規事業における計画行政の徹底や国及び県の補助金を職員一丸となって探す努力をします。(1)で述べたように、政策形成過程が熟成することによって、確実に無駄な投資は削減できます。また、事業化する前の市民審査などによって、これまでのような理由にならないような理由で1社随意契約などを防止することが可能です。


業者のいいなりになっている場面は現在でも多くみられ、これを是正するだけでも歳出を大幅に削減することが可能と考えます。なお、人件費削減については必ず期限を定め、それまでに職員が危機感をもって一定の水準を達成できない場合にはさらに削減を継続するといったシステムを考えています。

(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・私は総合計画検討特別委員長を務めましたが、その当時からコンサル主導の計画には非常に不満をもっています。総合計画は簡素な文書にて職員自らの力で作成すべきであり、それが公務員の醍醐味でもあります。財政運営との関係については、計画行政通り予算編成をすれば自動的に次年度予算が作成できる環境を構築したいと考えています。毎年なんとか予算が組めたというような計画に乗っ取らない財政運営手法に否定的な考えです。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・歳入歳出の過不足見込額、基金残高見込額、地方債の返済予定額一覧が必要です。持続可能な行政運営のためには、過不足額が基金残高や公債費に影響を与えるので、この数値を把握することにより長期の財政計画を予測できると考えます。現在の奈良市はシミュレーションを行える環境に無いため、情報系のデータを得られるシステムへと改変し、あらゆる要素からシミュレーションにて得られたデータを加味して計画立案すべきと考えます。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・政治は結果です。行財政改革が十分な成果を上げていたら現在のような財政状況には陥っていないと考えます。もちろん、経済状況の低迷など外的要因もあるものの、計画通りの人件費削減が職員の疲弊に繋がり効率が悪化するなど、派生した問題もあります。行財政改革はもっと簡易な表現で全職員が理解し共有する必要があります。また、市民にも理解を求めるものでなければならないと考えています。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・「財政力指数」「経常収支比率」、「将来負担比率」など各種指標はいずれも必要です。中でも持続的な財政運営のためには「将来負担比率」が重要であると考えています。地方自治体として、将来支払わねばならない負債が小さくなれば、必要な資金を必要な場面にまわすことができるようになります。これを意識した行政運営が重要だと考えます。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・基本的に市民参画および有識者が参加する財政危機突破委員会の設立には賛成です。市民と現下の財政状況に関する情報を共有するだけでなく、有識者により改善策に関するノウハウを得て、さらに総合計画との対比、他市事例、事業の見直しなどを行うことにより財政再建を目指すべきであると考えています。この中には若手職員も参画してもらい、20 年後を見据えた委員会とすべきです。

Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・財政再建を条例に則って行うという考えにはやや否定的です。条例や規則に縛られず、自由な考えから新しい発想を行うべきであると考えます。そもそも時代の流れは早く、即応した体制を取る方が有意性は高いのではないでしょうか?それよりも計画行政の徹底の方が効果的であると考えています。


※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。

【公開質問回答ー財政編ー中村あつ子さん】


中村あつ子さん
・中村あつ子ブログ http://n-atsuko.jugem.jp/?pid=1



1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。

A・これまで、町こわしの三条通の拡幅など、ムダとも言える大型公共事業に税金をつぎ込んできたツケがまわってきています。また、長期に及ぶ景気の低迷と正規雇用から非正規雇用への置き換えなどで市民の所得が減り、市税収入を減収させています。その上、国が負うべき地方財政への責任放棄による財政悪化が地方自治体を苦しめています。


奈良市では、土地開発公社をめぐる長年にわたる乱脈な運営で、約200億円もの損失を被らせました。しかし現市長は、この被害をもたらした当事者の責任を問うこともなく、金融機関への応分の負担を求めることなく、長期にわたる借金で穴埋めし、市民にその負担を転嫁しています。こうした無責任な市政運営を改め、市民のくらしを応援する姿勢への転換が求められます

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・財政状況の分析にあたっては、普通会計、特別会計企業会計、外郭団体など、それぞれの単位においての分析が重要と考えます。したがって、すべての会計ベースの借金残高を単純に合計しその額の大きさを強調して市民に不安を煽ることは、正確な情報提供とは言えません。それぞれの分野の財政状況を、その分野がもつ特質と照らして情報を発信することが重要です。現時点で財政非常事態宣言はそぐわないと考えます。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・土木・建設事業の財源の一部に充てられる市債は、その耐用年数に対応する年度間の負担と工費負担の平準化を果たす役割を持っており、市債発行の計画性を高めることで適切に運営できると考えます。平成23年度末の借金残高は、普通会計ベースで1976億9455万2千円です。この内63%はいわゆるハコモノにあてられ、30%は地方交付税など国が責任を持つべき財源をいったん借金に置き換えたものです。残る7%は職員のリストラなどによる退職金に充てた借金です。土木や建設事業を市民生活に密着した事業に転換すること、国に地方自治体への財源保障を徹底させることで、市債に依存した体質から脱却することです。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・何よりも市民の懐を暖める施策の実施が求められます。いま進められているアベノミクス政策は、日本を元気にする課題に逆行するもので、すでに破綻の兆しすら現れています。安心して暮らせる社会にするため、巨額の内部留保をもつ大企業には、雇用は正規雇用を基本に求めるとともに、応分の税負担を求めることが必要です。内需の拡大を基本に据えた経済政策が求められます。奈良市では、観光客を呼び込める施策が重要です。歴史と文化に直接触れられる「古都なら」の奥深い良さをアピールするとともに、町こわしとも言える三条通の拡幅などもってのほかです。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・いわゆるハコモノ事業を凍結し、建設事業を市民生活密着型の必要最小限の事業にします。そうすることで地方債残高が増えることを抑制し、起債償還のピークを過ぎることで財政の柔軟性を向上させることができます。


(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・財政運営と総合計画との関係については、総合計画の具体的な内容が市民のニーズに合致しているのかどうかは、常に検討されなければならないと考えます。その検証を通じて必要な事業の実施計画が立案され、それに従った財源確保が求められます。常に不要・不急の事業かどうか、また効果的か効率的かの検討と判断が求められます。思いつきの、その場限りの計画では市政は破綻します。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・歳入では、過去の実績と短期・中期の歳入見通しを明確にすることが必要です。歳出では、経常的な歳出の短期・中期の見通しとあわせ、起債残高と毎年度のその償還計画を明示して、予算編成に反映させることです。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・行財政改革というものの中味が、本当に市民のくらしを守る内容となっているかどうかが問われます。端的に言って、土地開発公社の不正とも言える乱脈な運営で新たに200億円もの負債を市民に背負わせました。その一方で、職員の非正規化と業務の民間委託を強引に進めています。地方自治体本来の役割を投げ捨てることが、行財政改革だと誤解されているのではないでしょうか。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・健全な財政運営を示す指標については、まず自治体の財政力を示す「財政力指数」があげられます。また、毎年度の財政状況を示す「実質収支比率」「経常収支比率」などがあげられます。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・厳しい財政運営になっている状況ですが、財政健全化判断指標はクリアしており、ことさら「財政危機」を強調するまでには至っているとは思えません。毎年度、歳入に見合った歳出計画をきっちりと立て、ムダな大型公共事業をストップすることで財政は健全化します。


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Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・地方自治法地方財政法などの「法の枠」を超えた条例制定が可能なのでしょうか。財政規律を守るのは市長に課された責務であり、予算編成とその執行にあたって誰が見ても公正なものにすることで、適正な財政運用が図れると考えます。

※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。

【公開質問回答ー財政編ー大野ゆうじさん】

大野ゆうじさん
・大野ゆうじ 公式ホームページ http://yujiono.org



1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。

A・奈良市財政再建は緊急の課題です。もし、財政が破綻すれば、行政サービスが大幅に削減され弱い者にしわ寄せがいく恐れがあります。財政再建緊急宣言を出し、無駄な支出の削減と増収を図る必要があります。

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・財政状況が危機的であることをわかりやすく市民に伝える。そして、財政状況が良くなればそれがわかるというように簡単な指標で示すことが重要です。松阪市では借金時計というアイデアを取り入れていますが、このようなアイデアを参考に市民に分かりやすく知らせる取り組みを行います。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・この10年間の経済低迷の中で税収が落ち込んだが、それに見合った支出の削減を行わなかったことが市債残高の増加をもたらしたと認識。市債残高を減らすには、支出の削減と増収を図ることが不可欠。支出に関しては、見込みの甘かった大型投資や歳入に見合った経費の支出をしてこなかった反省を踏まえ、無駄な支出を止め、効果的な支出を行います。同時に増収対策として、知恵を絞り新たな発想で経済振興に力を入れていきます。クリーンセンターや新斎苑場の建設による大型の起債については、将来の便益を将来の世代にも負担してもらうもの。一概に否定できないが、無駄な支出がないように厳密に予算額を精査するとともに、償還が容易になるような仕組みについて合わせて検討します。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・歳入を増やすためには経済振興が不可欠です。奈良市を魅力ある国際的歴史学術観光都市にし、人を呼び込み地域を活性化し、雇用を増やします。また、奈良市の強みを生かした新産業創出を支援します。同時に、女性の働きやすい環境を作ります。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・歳出の削減に当たっては、予算案作成段階から市民の参画を得ながら外部委員、専門家による時間をかけた予算案の精査を行い、その結果を踏まえ市長が予算案の策定を行います。また、規模の大きな事業については専門家による事業評価を行い、効果的に予算が使われるようにします。また、限られた人員で行政サービスを向上できるように、職員の士気を高め、職員が目的意識を持てるように職員が目指す方向性を明確化するとともに、縦割り組織を改め組織の風通しを良くするための取り組みを行います。市長自ら職員との対話を重視し、やりがいのある職場の構築に努めます。さらに、外部人材の登用、中途採用の実施、任期付職員の採用、研修のための休職制度の拡充等により柔軟な人事制度を採用し、住民ニーズに対応した効率的な行政サービスを実現します。


(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・現在の総合計画は総花的なものとなっています。この総合計画を時間と労力をかけて改めるよりは、特定のテーマごとに戦略、計画を策定します。たとえ
ば、長期観光戦略の策定、まちづくりと一体となった中長期交通計画の策定、女性が働きやすい環境整備のためのアクションプラン、健康増進計画の策定な
ど。これらのテーマごとの戦略、計画の策定結果を踏まえ必要があれば総合計画を改定します。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・中長期的な財政計画を策定します。毎年予算編成の方針を示し、年度終了後に財政計画に照らして財政状況を評価します。その評価を踏まえ、次の予算編成方針を策定する。財政状況の評価、予算編成方針は、市民がわかりやすいように工夫をして公表します。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・平成24年の第5 次行財政改革大綱・実施計画によると、これまでの取り組みについて一定の評価はできるが、取り組むべき課題として計画されながらも推進できなかった項目もあると記載されています。まだまだ行財政改革を進めていく必要があります。市長の強力なリーダーシップのもと、新しい発想でこれまで実現できなかったことも大胆に切り込んでいきます。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・外部専門家等の意見を聴き、財政の健全化を判断する主要な指標を定めます。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・財政をコントロールするには、(3)②の手法により、具体的な検討は個別のテーマやプロジェクトごとに予算化を厳しく検討する必要があります。奈良市財政危機突破委員会の趣旨があまり明確でないのでコメントできませんが、総論的な委員会を作っても、とりまとめ文書の作成だけに陥る恐れがあるので役割を良く考えて作る必要があると考えます。

Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・条例制定の必要性について、他の手法との比較を含め今後検討します。

※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。

【公開質問回答ー財政編ー池田のり久さん】

池田のり久さん
・池田のり久 公式ホームページ http://ikeda-norihisa.jp


1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。

A・奈良市の財政の現状は、歳出面では生活保護費などの社会保障関係費が年々増加し、公債費についてもその割合が高い状況が続いています。さらに、平成25年度からは、第三セクター等改革推進債の償還が始まる一方、歳入面では市税の大きな伸びは見込めず、自主財源の比率も5割を割り込むなど、大変厳しい財政状況が続いており、まさに非常事態で待ったなしです。


このような状況の中、歳入においては、市税収納率の向上や滞納税や税外債権の回収強化はもちろん、新しい産業の育成をはじめとする地域経済活性化策による市税収入の増加を目指したいと考えております。また、歳出においては、施策の徹底した見直しと民間活力の更なる活用を進めることでスリムな行政を構築するなど、歳入・歳出のあらゆる面から財源確保を図り、財政再建に取り組んでいきます。

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・まず、財政悪化に至った原因を究明し、検証結果を市民の皆様へ告知します。その上で、当時の責任者に対し、法的措置も含めて責任追及を行います。また、「財政非常事態宣言」を発し、行政内部はもちろん、市民の皆様にも危機意識を共有していただき、この厳しい状況を乗り越えていくため、ご理解とご協力を求めてまいります。財政情報の共有化の方法としては、借金時計の設置、ホームページやしみんだより等の広報媒体の活用をはじめ、市政懇談会等あらゆる機会を通じて、市民の皆様へきちんと丁寧に説明いたします。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・市債のうち建設地方債については、道路整備や下水道整備といった市民の生活に直結するインフラ整備事業や災害時の避難所となる教育施設等の耐震化事業など重要性や緊急性のある事業の推進には、一定額の発行が必要であると考えておりますが、それぞれの事業については政策決定段階において、その事業の必要性や事業効果について事前検証するとともに、発行額全体の抑制を図っていかなければならないと考えております。また、巨額の市債残高が累積している状況については、過去の大型公共事業に伴う多額の市債発行によるものが大きな要因であると考えています。また、近年は交付税の代わりである臨時財政対策債の発行が多くなっており、後年度元利償還金に普通交付税算入措置されるとはいえ、このことも市債残高の増加の大きな要因となっていると考えております。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・財政再建のためには、歳入の増加策が特に重要になってまいります。 歳入では、平成8年と比べ、市税収入が約100 億円も減少しております。そこで、歳入の増加策として、市税収納率の向上や滞納税や税外債権の回収強化はもちろん、新しい産業の育成をはじめとする地域経済活性化策による市税収入の増加を目指したいと考えております。成長戦略による地域経済の活性化と雇用機会の創出を力強く進めたいと考えております。具体的には、中心市街地や地域の商店街に賑わいを取り戻せるよう、活性化のための規制緩和や中小企業支援策により、市内消費の拡大と雇用機会の創出を図ります。また、多くの観光客に訪れていただけるよう春・秋の観光シーズンだけでなく、夏・冬のオフシーズンにもイベント等の事業を実施することにより観光振興政策と誘客増加戦略を推進します。 その他、農業、環境エネルギー、医療に特化した産業を奈良に興すなど、新しい産業を育成支援することにより、奈良への投資を促します。


これらの地域経済活性化策の実現には、私自らがトップセールスで企業や人材を奈良へ呼び込む覚悟です。加えて、風水害や地震等の災害に強い奈良(日本一安全な奈良)をアピールすることにより、企業の本社機能を奈良へ誘致したいとも考えております。これら地域経済の活性化と雇用の創出により、奈良に元気と活力が拡がり、まちの魅力が向上します。低迷している市税収入の増加により財政再建が進み、市民サービスの充実と市民満足度の向上が定住人口の増加につながると確信しております。これら好循環をもたらす地域経済活性化を柱とする成長戦略を是非実現したいと考えております。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・奈良市は、第4次総合計画の実施計画において、平成27年度までの普通会計における大きな収支不足が見込まれる中で、歳出の削減を断行しなければなりません。そのために、まず、現在、奈良市で実施しているすべての事業の必要性や事業効果を検証します。その上で、改めて一から政策立案し、総合計画そのものをゼロベースで見直します。その見直しにおいては、民間でできることは民間に任せるなど、行政の事業数(業務量)を大幅にスリム化します。総合計画の見直しにあたっては、市民の皆様にも参画していただきます。また、事業数(業務量)と職員数とのアンバランスを解消し、必要な職員数の把握や人事配置の適正化を進めます。


(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・財政の再建のために、当然のことながら総合計画の見直しは必要です。とりわけ、計画段階から収支不足という無茶苦茶な計画は、最初から間違っていると考えておりますので、すべての事業の必要性や事業効果を検証し、その上で、改めて一から政策立案し、総合計画そのものをゼロベースで見直します。もちろん、計画段階における収支不足は解消します。つまり、身の丈に合った事務事業に絞り込むことにより、財政計画との整合性を図ることができると考えております。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・中期財政計画(5年間の財政計画)は、中期的な財政収支の見通しをたてることで、現在および将来にわたる財政の姿や行財政運営上の課題や問題を明らかにするものであり、歳入と歳出の見込み額はもちろん、また、将来負担について考えていく上で、市債残高の見込みや基金残高見通し、積算根拠なども計画に明記する必要があると考えています。いずれにしても、財政再建とともに健全な財政運営を進める上でも、市議会や市民の皆様に状況を丁寧に説明し、批評いただきながら、財政運営を進めたいと考えております。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・奈良市行財政改革は、これまで5次にわたる大綱を策定し、様々な手法を活用しながら取り組みを進めてきましたが、組織や制度改革にしても、現在の財政的な視点での取り組みも、他都市に比べてかなりの立ち遅れがありました。これは、旧態依然とした行政の体質そのものに原因
があると言えます。単に意識改革にとどまらず、徹底的に体質改善を図り、経営感覚を兼ね備えた行政を実現します。つまり、行政システムそのものを根っこからやり直し、体制そのものを大改革しなければ、本当の行財政改革は実現できないと考えております。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・持続可能な財政基盤を確立しつつ、奈良市の地域経済の活性化を図り、市民の生活の安全安心を守っていくためには、効果的かつ効率的な財政運営に取り組み、将来世代への負担を軽減することが不可欠です。現在の硬直した財政の再建が急務であることから、中核市ランクでワースト1(平成23年度決算)である「将来負担比率」と「経常収支比率」が特に重要となる指標であると考えています。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・現在、奈良市では、行政改革の推進を担当している行政経営課がありますが、総合政策課、財政課、人事課との連携が全く図られていないと感じております。このことは、市議会でも厳しく指摘しましたが、どの課もバラバラに動いているために、責任の所在があいまいです。このような体制では、財政再建は進められません。強力かつスピーディーに財政再建を進めるために、実効力のある組織体制を構築します。また、市民や専門家にも助言をいただき、非常事態を打開していくことは大切であると考えておりますので、是非参画していただきたいと思います。

Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・財政再建には、財政規律の確立が不可欠であり、またそのための原理原則、理念が当然のことながら必要であります。そのために、条例などにより財政運営の基本原則や考え方を定めることについては、ある程度の効果が見込めるであろうと考えています。しかしながら、奈良市の現状においては、速やかに財政再建の具体的な対応策や方針を立て、それを着実かつスピーディーに実行することが求められていると考えております。

※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。



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【公開質問回答ー財政編ー仲川げんさん】

仲川げんさん
仲川げん 公式webサイト http://www.nakagawagen.net



1.財政の健全化について


(1)奈良市の財政状況について

Q・奈良市財政の現状、あるいは財政運営についてどのように認識されていますか。その現状認識と課題についてお書き下さい。

A・過去の奈良市の財政運営は人件費も含めて高コスト体質であったため、行政のムダゼロを目指し、事業仕分けをはじめとした様々な取組を進めてきました。奈良市の財政状況を見ますと、その特徴として、起債残高が大きいことがあげられます。公営企業も含めた奈良市全体の起債残高は、平成23 年度末で約2,787 億円ですが、過去の過大な公共投資に係る市債の発行が大きな要因です。そのため、市長就任以降は大型箱物事業の見直しなど、公共投資に係る市債の発行を抑制した結果、地方交付税の代替財源である臨時財政対策債などの特例債を除いた地方債残高は、平成20 年度末の約2,236 億円から平成23 年度末には約2,132 億円へと、約104 億円の低減を図りました。


また、職員数の多さも特徴のひとつです。平成24年4 月1 日現在の職員数は3,000 人ですが、定員適正化計画に基づく職員削減や、事業の民間委託化を進めた結果、平成21 年4 月と比較して149 人削減しています今後もこれらの取組を継続して進めていく必要があると考えています。

(2)財政運営のあり方について

Q・①市民との財政情報の共有についてお聞きします。財政情報の市民との共有化が求められていますが、どのような方法で市民との財政情報の共有化を図りますか。その共有化のための具体的な方策をお書き下さい。また、「厳しい財政状況の認識を市民と共有するため、奈良市は財政非常事態宣言を出すべき」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。

A・財政情報の共有化については、これまでの当初予算案の公表に加えて、平成22 年度予算からは要求・査定状況を、平成25 年度からは市が実施している全ての事業についてその内容を市ホームページに掲載しています。また、平成24 年度からは中学生の皆さんにもわかるように「わかりやすい予算書」を作成しており、今年度は、「わかりやすい決算書」も作成し、財政情報をよりわかりやすくお示ししていきたいと考えており、これらの情報の中で奈良市の厳しい財政状況を市民の皆様にお知らせしてまいります。

Q・②市債(地方債)についてお聞きします。市債発行の基本的な考え方および市債残高を軽減する方策をお書き下さい。また財政力指数は、過去、中核市の平均以上の数値であるにもかかわらず、巨額の市債残高を累積する状況に陥った原因はどこにあると認識されていますか?

A・市債の発行にあたっては、その償還が将来世代の担うべき、かつ担い得る範囲を超えないよう、十分配慮する必要があります。現在、毎年の起債償還の中で最も大きな負担となっているのが100 年会館であるように、バブル期の過大な公共投資が現在の奈良市にとって大きな財政負担となっています。公共投資に係る市債の発行については極力抑制すべきであり、また、臨時財政対策債については、その残高が平成23 年度末で約404 億円と増加の一方ですが、これは本来地方交付税で措置されるべきものであり、国において制度の見直しが必要と考えます。


Q・③歳入の確保についてお聞きします。歳入確保に向けた基本的な考え方および歳入確保の方策をお書き下さい。特に、歳入増に効果的と思われる経済発展策についても言及して下さい。


A・歳入の確保については、100 億円を超える滞納債権の解消が最重要課題であると認識しています。これはこれまで市税や市営住宅家賃等の滞納について市が厳しい対応をしてこなかったことが要因であることから、差し押さえや裁判所への訴えの提起など、公平性の観点から厳正な対応を行っています。さらに、税外債権について、弁護士等の外部の専門家に回収業務を委託するなど、今後も様々な手法により歳入確保に努めていきます。


経済成長については、定住人口・交流人口の増加が重要であるため、市内の雇用、経済活性化はもちろんのこと、良好な住宅都市としての質を高めるとともに、インバウンドを推進し付加価値の高い観光経済の樹立を目指します。2045 年のリニア中央新幹線開通に向け、30 年後の奈良市の飛躍に向けて取り組んでまいります。

Q・④歳出の見直しについてお聞きします。歳出削減に向けた見直しの基本的な考え方および削減方策についてお書き下さい。


A・これまでも徹底した事業の見直しを行ってきましたが、今後は官民役割分担をさらに進める必要があります。また行政が引き続き担う領域においても、民間委託や協働など、多様な実施手法を柔軟に取り入れるべきと考えます。一方、高齢化に伴い増加傾向が著しい介護や医療などの分野においては、長期的な視点に立って予防的観点での取り組みにより将来的な負担を軽減してまいります。


人件費については、計画的な職員削減に加えて、特殊勤務手当の大幅な見直しや超過勤務手当の3 億円削減などに取り組みましたが、今後も業務内容や運営手法を継続的に見直すほか、職務の専門性やレベルに応じ、メリハリのある給与構造を検討していきたいと考えています。


(3)計画的な財政運営について

Q・①財政運営と総合計画との関係についてお聞きします。総合計画と財政運営の関係についての基本的な考え方をお書き下さい。また、「総合計画の前期基本計画・実施計画の見直し、あるいは総合計画全体の見直しをしてはどうか」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか。


A・総合計画は市政運営における市の基本的な方向性を示したものですが、社会情勢の変化が激しい今日において、計画行政の意義自体が薄れつつあります。現在の奈良市の総合計画は、基本構想が平成23 年度から平成32 年度までの10 年間、基本計画が5 年間、実施計画が3 年間で毎年度ローリングとなっていますが、近年の社会情勢は10 年間で大きく変化することが見込まれ、それらの変化に対応して柔軟に見直していくことが必要であると考えます。


Q・②中期財政計画(5 年間の財政計画)についてお聞きします。計画的な財政運営を行っていくためには、総合計画との整合性を図った上で、中期的な財政見通しに基づく財政計画を策定する必要があります。計画的に財政運営をコントロールするための、あるいは市民が財政運営状況をチェックするために必要な計画項目を設定する必要があります。中期財政計画に必要な項目と、その理由をお書き下さい。



A・現在の中期財政計画については、総合計画実施計画において示していますが、今後計画を策定するにあたっては、中長期的な視点を持って行財政改革を進めながら、まず将来の歳入の見極めをしっかりと行い、それに見合った事業計画を立てていく必要があります。そのことから、収支バランスを考慮した「歳入見込み額」と「歳出見込み額」が重要であると考えます。


Q・③奈良市行財政改革は昭和60 年(1985 年)から始まっていますが、行財政改革は十分な成果を上げていると思っておられますか?もし十分な成果をあげていないとお考えでしたら、その理由をお書き下さい。

A・本市では約30 年前から行財政改革に取り組んできましたが、市債残高の増による将来負担の増加や、土地開発公社をはじめとする負の遺産の処理、また、滞納債権の回収など、本来早期に着手すべき課題に対しての対応が不十分であったと認識しています。そのことから、これらの問題に対して市長就任以来積極的に取り組んでまいりましたが、今後も強い意志を持ち、取り組んでまいります。


(4)財政運営の健全化について


Q・①健全な財政運営の状況を示す指標についてお聞きします。財政運営の健全性を判断する指標として必要だと思っておられる指標をお書き下さい。

A・市が独自の施策を展開していくためには自由度の高い財源が必要であることから「経常収支比率」、また、長期的な財政運営の視点からは、「将来負担比率」が重要な判断指標になると考えます。これらは市民の皆様にとっても比較的わかりやすい指標であると思います。


Q・②財政健全化を推進する組織についてお聞きします。財政危機ともいえる奈良市の財政を立て直すためにも、あるいは財政健全化を強力に推進するためにも推進組織が必要です。求められる推進組織はどのような組織であるべきだとお考えですか。また、「財政危機を突破するためには、広く市民や専門家が参画する奈良市財政危機突破委員会(仮称)を発足させるべきだ」との意見がありますが、このような意見に賛成ですか?

A・財政健全化には庁内横断的な組織が必要です。現在市では市長を本部長とした「行財政改革推進本部」を設置していますが、作業部会の設置など、より実践的に改革を実行するための体制整備が必要であると考えます。市民や専門家が参加する委員会については、現在、学識経験者などの専門家および公募市民で構成する「行財政改革評価会議」を設置し、行財政改革への取組について様々なご意見をいただいております。


Q・③財政健全化には財政規律の確立が不可欠です。財政規律を確立するための条例制定についてお聞きします。「奈良市財政の現状を考えると、財政運営の基本原則、計画的な財政運営、財政運営の健全化などを規定する「奈良市健全な財政運営に関する条例」(仮称)を制定すべき」という意見がありますが、このような意見に賛成ですか?財政の健全化を確立するための条例制定についてのご意見をお書き下さい。

A・多治見市、富士見市の条例は主に財政運営に際しての基本的な原則を謳ったものであり、財政規律の確立のためにはより実務的な指針が必要です。奈良市においては、行財政改革実施計画において「財政規律の強化」を掲げ、事務事業の見直しや市債残高の削減に取り組んでいますが、これらを着実に実行するとともに、どうすれば実質的に財政健全化を確立できるかを建設的に議論していく必要があると考えます。


※「市民参画編」は後日とりまとめします。この市民参画についての回答を含め、その他の立候補予定者の回答や、論点ごとのとりまとめたものを、すでに、「市長立候補予定者・議員立候補予定者の公開開質問に係る報告書」として公開しております。ぜひご参照ください。



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